こんにちはハッピーサトさんです。
2021年のF1エンジン(パワー・ユニット)は4メーカー(メルセデス、フェラーリ、ホンダ、ルノー)のV6ターボ・エンジンが採用されていました。
しかし、F1の歴史を遡ってみると1980年代のターボ時代には直列4気筒ターボやV6・V8ターボ、1989年以降のNA(ノン・ターボ)時代にはV8・V10・V12・F12・W12エンジンがあり、エンジン・メーカーが10社近く参入している時期もありました。
日本製エンジンではチャンピオン獲得エンジンとなったホンダ以外にも、トヨタ・ヤマハ・スバルがF1に参戦していました。
という事で、今回はF1で採用されたエンジン・メーカーと気筒数の変遷の歴史について整理してみました。
1987年~2022年の間で、どのメーカーのエンジンを何チームが採用搭載していたのかを年度別に集計してみました。ブログ上で見やすくするために各時代に区切ってまとめてみました。
1987年~1997年(ターボ~NAエンジン時代)
まずは、中嶋悟さんがフル参戦しフジテレビでF1中継が始まった1987年から1997年までの年度別のエンジン・メーカーの採用数と気筒数の変遷をまとめてみました。
1987-1997計 | 1987 | 1988 | 1989 | 1990 | 1991 | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 | 1997 | ||
フォード・コスワース | 66 | 6 | 9 | 11 | 10 | 7 | 3 | 4 | 5 | 5 | 3 | 3 | フォード・コスワース |
フェラーリ | 15 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 2 | フェラーリ |
ルノー | 15 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | ルノー | ||
ジャッド | 15 | 3 | 4 | 4 | 2 | 2 | ジャッド | ||||||
ホンダ | 9 | 2 | 2 | 1 | 1 | 2 | 1 | ホンダ | |||||
ランボルギーニ | 8 | 1 | 2 | 2 | 2 | 1 | ランボルギーニ | ||||||
ヤマハ | 8 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | ヤマハ | |||
無限 | 6 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 無限 | |||||
イルモア | 6 | 1 | 2 | 1 | 2 | イルモア | |||||||
ハート | 5 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | ハート | ||||||
BMW | 4 | 3 | 1 | BMW | |||||||||
プジョー | 4 | 1 | 1 | 1 | 1 | プジョー | |||||||
メルセデス | 3 | 1 | 1 | 1 | メルセデス | ||||||||
ポルシェ | 2 | 1 | 1 | ポルシェ | |||||||||
アルファロメオ | 2 | 1 | 1 | アルファロメオ | |||||||||
ザクスピード | 2 | 1 | 1 | ザクスピード | |||||||||
スバル | 1 | 1 | スバル | ||||||||||
ライフ | 1 | 1 | ライフ | ||||||||||
モトーリ・モデルニ | 1 | 1 | モトーリ・モデルニ | ||||||||||
採用合計 | 173 | 16 | 18 | 20 | 21 | 19 | 16 | 13 | 14 | 13 | 11 | 12 | 採用合計 |
シーズン | 1987-1997計 | 1987 | 1988 | 1989 | 1990 | 1991 | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 | 1997 | シーズン |
※1990年のコローニは、8戦までスバル製、9戦からフォード・コスワース製を使用、それぞれ1カウント
※1991年のアロウズは、6戦までポルシェ製、7戦からフォード・コスワース製を使用、それぞれ1カウント
※1994年のザウバーエンジンはイルモア製としてカウント
1987年から1997年までの期間で最も多くのチームに採用されたエンジンは、合計66チームに採用搭載されたフォード・コスワース・エンジンでした。
特にターボ・エンジン禁止でNAエンジンに移行する必要があった1989年は、参加20チームのうち過半数を超える11チームがフォード・コスワース・エンジンを採用していました。
いかにフォード・コスワース・エンジンがF1に必要とされていたかが分かります。
この期間に登場したエンジン・メーカーは19社でしたが、1990年と1991年には1年に9社のエンジンが採用されていました。2022年現在のエンジン・メーカーが4社なので2倍以上という非常に多くのメーカーがF1に参入していたことが分かります。
大手メーカーのエンジン以外にも、短命でしたがザクスピード、ライフ、モトーリ・モデルニといった自社製のエンジンを開発して搭載するチームもありました。馬力・信頼性は全くありませんでしたがライフは自社製のW型12気筒エンジンを積んでいました。
1990年前後はバブル期とF1ブームの影響もあり、日本企業がスポンサーになったりチームを買収するなどしましたが日本製エンジンも登場していました。
そしてエンジンでもホンダは勿論のこと、スバル、ヤマハ、無限といった日本製エンジンがこの当時参戦していました。
ホンダはマクラーレンとの黄金期にターボでもノンターボでもチャンピオンをとりましたが、ヤマハもV8、V10、V12と異なる気筒数のエンジンを幅広く開発していました。また、いすゞ(イスズ)のV12エンジンは実践には投入されませんでしたがロータスがテスト時に搭載しました。
このように、この時期は多種多様な形状のエンジンが登場しましたが年度別の気筒数の変遷は以下の通りです。
シーズン | 1987-1997計 | 1987 | 1988 | 1989 | 1990 | 1991 | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 | 1997 | シーズン |
直4ターボ | 6 | 4 | 2 | 直4ターボ | |||||||||
V6ターボ | 9 | 6 | 3 | V6ターボ | |||||||||
V8ターボ | 2 | 1 | 1 | V8ターボ | |||||||||
V8 | 79 | 5 | 12 | 16 | 14 | 8 | 3 | 4 | 5 | 6 | 3 | 3 | V8 |
V10 | 52 | 2 | 2 | 4 | 7 | 6 | 8 | 6 | 8 | 9 | V10 | ||
V12 | 23 | 2 | 3 | 7 | 6 | 3 | 1 | 1 | V12 | ||||
F12 | 1 | 1 | F12 | ||||||||||
W12 | 1 | 1 | W12 | ||||||||||
採用合計 | 173 | 16 | 18 | 20 | 21 | 19 | 16 | 13 | 14 | 13 | 11 | 12 | 採用合計 |
1988年までのターボ時代には直列4気筒ターボ・エンジンやV8ターボ・エンジンもありました。
NAエンジンのみとなった1989年以降はV8エンジンが多く採用され主流でしたが、1992年ごろからV8とV12エンジンは減少しV10エンジンが主流となっていきます。
そして1998年からは全チームのエンジンがV型10気筒となりました。
1998年~2005年(V10エンジン時代)
1998年以降は全チームがV10エンジンとなり参入エンジン・メーカーも絞られてきました。
この時期は先ほど登場していたジャッド、ランボルギーニ、ヤマハ、イルモア、ポルシェ、アルファロメオ、ザクスピード、スバル、ライフ、モトーリ・モデルニのエンジンが撤退しリストから消滅してしまっています。
代わってワークスとしてF1に参戦したトヨタの自社製エンジンが新登場。
1998-2005計 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | ||
フォード・コスワース | 19 | 3 | 2 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 2 | フォード・コスワース |
フェラーリ | 17 | 2 | 2 | 2 | 3 | 2 | 2 | 2 | 2 | フェラーリ |
ルノー | 12 | 2 | 3 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | ルノー |
メルセデス | 8 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | メルセデス |
ホンダ | 8 | 1 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | ホンダ | ||
BMW | 6 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | BMW | ||
トヨタ | 5 | 1 | 1 | 1 | 2 | トヨタ | ||||
プジョー | 5 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | プジョー | |||
無限 | 3 | 1 | 1 | 1 | 無限 | |||||
ハート | 2 | 1 | 1 | ハート | ||||||
採用合計 | 85 | 11 | 11 | 11 | 11 | 11 | 10 | 10 | 10 | 採用合計 |
※アジアテックはプジョー製としてカウント
V10時代の期間でもフォード・コスワースが最も多くのチームに採用されました。それに匹敵したのはフェラーリ・エンジン。両社とも毎年2チーム以上にエンジンを搭載していましたが、他メーカーのエンジンは1チーム供給にとどまっていました。
↓10気筒エンジンの通過音↓
そして2006年からはレギュレーション変更によりV型8気筒エンジンへと移行することになります。
2006年~2013年(V8エンジン時代)
2006年からはレギュレーション変更により全チームがV8エンジンを使用する事に。ただし、トロ・ロッソのみ2006年に搭載するV8エンジンを用意できず、特例でレブリミッター制限付きのV10エンジンを使用した。
この時期は先ほど登場していた無限、プジョー、ハートが撤退しリストから消滅してしまっています。
2006-2013計 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | ||
フェラーリ | 22 | 2 | 3 | 3 | 2 | 3 | 3 | 3 | 3 | フェラーリ |
ルノー | 20 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 | 3 | 4 | 4 | ルノー |
メルセデス | 18 | 1 | 1 | 1 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | メルセデス |
フォード・コスワース | 12 | 2 | 4 | 3 | 2 | 1 | フォード・コスワース | |||
トヨタ | 8 | 2 | 2 | 2 | 2 | トヨタ | ||||
ホンダ | 6 | 2 | 2 | 2 | ホンダ | |||||
BMW | 4 | 1 | 1 | 1 | 1 | BMW | ||||
採用合計 | 90 | 11 | 11 | 11 | 10 | 12 | 12 | 12 | 11 | 採用合計 |
2006年から年までの期間で最も多くのチームに採用されたエンジンは、合計22チームに採用搭載されたフェラーリ・エンジンでした。
V8エンジン移行初年度のエンジン・メーカーは7社でしたが徐々に参入数が減少し、2010年からは4社へと絞られています。
↓8気筒エンジンの通過音(70~90年代マシン)↓
2014年~2021年(V6ターボ・エンジン時代)
そして、現在のV6ターボ・エンジン(パワーユニット)時代に突入、先ほど登場していたフォード・コスワースとトヨタが撤退しリストから消滅してしまっています。
V8エンジン時代から参入していたフェラーリ、メルセデス、ルノーに加え、第四期で復活参入したホンダの4メーカーでの戦いとなりました。
2014-2021計 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | ||
メルセデス | 28 | 4 | 4 | 4 | 3 | 3 | 3 | 3 | 4 | メルセデス |
フェラーリ | 25 | 3 | 3 | 4 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | フェラーリ |
ルノー | 19 | 4 | 2 | 2 | 3 | 3 | 2 | 2 | 1 | ルノー |
ホンダ | 10 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 | ホンダ | |
採用合計 | 82 | 11 | 10 | 11 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 採用合計 |
2014年以降のV6ターボ・エンジン(パワーユニット)時代に最も多くのチームに採用されたエンジンは、合計28チームに採用搭載されたメルセデス・エンジンでした。
この8年間のうちメルセデスは7度のチャンピオン・エンジンとなり他エンジンを圧倒しシーズンを支配していましたが、ついにホンダが第四期最終年にメルセデスを倒しタイトルを獲得した。
↓V6ターボの通過音(1980年代~2010年代)↓
1987年から2021年のメーカー別タイトル獲得ランキング
ここでは1987年から2021年にドライバーズタイトルを獲得したチームに搭載されていたエンジン・メーカーと、タイトル獲得数を見て行きます。
まずは1987年以降の年別のドライバー・チャンピオンと搭載エンジンです。
年度 | チャンピオン | チーム | エンジン |
1987年 | ネルソン・ピケ | ウィリアムズ | ホンダ |
1988年 | アイルトン・セナ | マクラーレン | ホンダ |
1989年 | アラン・プロスト | マクラーレン | ホンダ |
1990年 | アイルトン・セナ | マクラーレン | ホンダ |
1991年 | アイルトン・セナ | マクラーレン | ホンダ |
1992年 | ナイジェル・マンセル | ウィリアムズ | ルノー |
1993年 | アラン・プロスト | ウィリアムズ | ルノー |
1994年 | ミハエル・シューマッハ | ベネトン | フォード・コスワース |
1995年 | ミハエル・シューマッハ | ベネトン | ルノー |
1996年 | デイモン・ヒル | ウィリアムズ | ルノー |
1997年 | ジャック・ヴィルヌーヴ | ウィリアムズ | ルノー |
1998年 | ミカ・ハッキネン | マクラーレン | メルセデス |
1999年 | ミカ・ハッキネン | マクラーレン | メルセデス |
2000年 | ミハエル・シューマッハ | フェラーリ | フェラーリ |
2001年 | ミハエル・シューマッハ | フェラーリ | フェラーリ |
2002年 | ミハエル・シューマッハ | フェラーリ | フェラーリ |
2003年 | ミハエル・シューマッハ | フェラーリ | フェラーリ |
2004年 | ミハエル・シューマッハ | フェラーリ | フェラーリ |
2005年 | フェルナンド・アロンソ | ルノー | ルノー |
2006年 | フェルナンド・アロンソ | ルノー | ルノー |
2007年 | キミ・ライコネン | フェラーリ | フェラーリ |
2008年 | ルイス・ハミルトン | マクラーレン | メルセデス |
2009年 | ジェンソン・バトン | ブラウン | メルセデス |
2010年 | セバスチャン・ベッテル | レッドブル | ルノー |
2011年 | セバスチャン・ベッテル | レッドブル | ルノー |
2012年 | セバスチャン・ベッテル | レッドブル | ルノー |
2013年 | セバスチャン・ベッテル | レッドブル | ルノー |
2014年 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | メルセデス |
2015年 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | メルセデス |
2016年 | ニコ・ロズベルグ | メルセデス | メルセデス |
2017年 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | メルセデス |
2018年 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | メルセデス |
2019年 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | メルセデス |
2020年 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | メルセデス |
2021年 | マックス・フェルスタッペン | レッドブル | ホンダ |
1987年以降でドライバーズ・タイトル獲得へ導いたエンジンは5メーカーのみ。
おおまかには、ホンダ → ルノー → フェラーリ → ルノー → メルセデスという流れでエンジン・メーカーがシーズンを支配してきました。
その5社のエンジン・メーカーのうち、ドライバーをチャンピオンへと一番多く導いたエンジンはどのメーカーだったのでしょう。チャンピオン獲得回数でランキングにしてみました。
タイトル回数 | エンジン | 搭載チーム |
11 | メルセデス | メルセデス、マクラーレン、ブラウン |
11 | ルノー | ウィリアムズ、レッドブル、ルノー、ベネトン |
6 | フェラーリ | フェラーリ |
6 | ホンダ | マクラーレン、レッドブル、ウィリアムズ |
1 | フォード・コスワース | ベネトン |
1987以降に一番多くタイトル獲得へと導いたエンジンはメルセデスとルノーでした。それぞれ11回タイトルを獲得しています。
そして、その次に多くタイトル獲得をしていたのは、フェラーリとホンダでそれぞれ6回タイトル獲得。
フォード・コスワースは1994年の1回だけとなりました(マシン不正疑惑やオーストラリアGPでのミハエル・シューマッハ疑惑の接触などもありましたが・・・)。
↓タイトル獲得回数順の最強ランキングこちら↓
さいごに
今回は1987年以降のエンジン・メーカーの採用数から各時代のエンジン勢力図を振り返ってみました。
私がF1に熱中し始めた頃(1990年前後)は12気筒エンジン最強!みたいなイメージを持っていたのですが、1987年以降だとV12がチャンピオンに導いたのは1991年のホンダV12のみでした。
それ以前に12気筒エンジンがドライバーをチャンピオンに導いたのは、フェラーリに搭載されたフェラーリF12(水平12気筒)エンジンで、1979年ジョディ・シェクター、1977年&1975年ニキ・ラウダがチャンピオンとなりました。
1950年から現在までで12気筒エンジンでチャンピオン獲得に導いたのはホンダV12(1回)とフェラーリF12(3回)しかなかったのです。意外と少ないですよね^^;
2022年にはグラウンド・エフェクトを活用するマシン・デザインとなり、2026年には新エンジン・レギュレーションが採用され新規エンジン・メーカーの参入が噂されている。
2026年以降はエンジン・メーカーの支配・勢力図も変化していきそうで楽しみデス。
それではまた^^!
F1チームの変遷について